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除け者の栄光

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著者: ドミニック・フェルナンデス
翻訳: 榊原 晃三

内容紹介: 作家のベルナールはエイズのために死んでいった。だが、その死顔には誇りにも似た安堵の表情が浮かんでいた…なぜ?

作家のベルナールは、二十も年の離れた青年のマルクと同棲していた。かつては、同性愛者であることは、世間の除け者として非難の対象だった。だが、今では、ライフ・スタイルの一つとして公認されている。

長年、除け者として生き、そのことに衿持すら感じていたベルナールにとって、こうした風潮は喜こばしいどころか、苦々しいものだった。

ところが、ある日、ベルナールがエイズ患者であることが判明し、マルクの献身的な看護が続く。しかし、新たに世間の除け者として死んでいきたいというベルナールの願いを入れたマルクは、毒薬を注射器に注入する……(新潮社)

感想: 紹介文にある公認というのには、歴史的背景がある。フランスの五月革命のことだ。詳しいことはよくわからないので、ウィキペディア(Wikipedia)の五月革命(フランス)を参照されたい。この革命によって、同性愛者も市民権を求めるべく解放されたということだろうか。

そして、その革命を挟んで作家のベルナールと恋人のマルクが存在する。年の差は二十歳。ベルナールは四十五歳で、同性愛は社会から蔑視されることであり、それゆえに同性愛であることのすべてを手にするためには、地下潜入という形を取らざるを得なかった。若者にありがちな冒険、恋、快楽など、すべてはタブー視され、ベルナールは社会の除け者として生きてきた。

だが、彼には、除け者ゆえの誇りがあった。革命が変化を齎したにせよ、それがマルクを始め当世代の若者に良かれとされるものであっても、除け者として生きてきたベルナールには、その変化を素直には受け入れられない何かがあったのかも知れない。それは、何か?

読みながら、重ね合わせてみた。二丁目も昔は赤線で、ホモのホの字もなかったという。昔のホモの写真をどこぞから探してきても、その絵にはどこか秘密めいたもの、罪なもの、闇というか地下に埋没しているような感がある。

例えば、おすぎとピーコさんや伊藤文学氏に美輪明宏さん。彼らが自分が同性愛者として自覚し、それを受け入れ自分に正直に生きようとした時代は、まさに五月革命前と同じだったのではないだろうか。戦時中を引きずり、役に立たないと人間扱いもされず、社会の一員として認められなかった時代。

当時に比べたら随分と自由な時代になりはしたけど、それでも今でも蔑視や差別・偏見と、表立って社会のつまはじきにされることは減ったにしても、やはり世間からは認めがたい生き方をしている私たちには、幾許かの苦渋はどうしてもついて回る。

そんな苦々しい思いをしながらも、自分を同性愛者だと認め自覚し、許される限りの中で時に社会と戦い精一杯生きてきた者たちは、これががらりと時代が好転したとして、果たして素直に受け入れ喜べるのだろうか。

そこに、ベルナールが除け者として死んで行く意味があるのだと思う。苦しみながらも、その中で一生懸命生きてきた自分の生の証を消したくないのではないだろうか。

これは同性愛者に限らず、ごく普通に人々の話にふと出てくる「あの時代は…」と昔に思いを馳せ、「俺はあの時代を生きてきたんだ」という自身を肯定する言葉に似ている。

確かに時代は変わった。革命は変化を齎した。同性愛者であることが、公認されるようになった。以前のように、怯えながら行動しなくてもよくなった。けれど……その「けれど」の中身を探ることが、この作品を読む意味でもあるだろう。

また、この作品は新たな問題として、エイズを取り上げた。フランスとアメリカがこの新種の病の正体を探り、ワクチンを求め競争していた時代。私は、以前採り上げた映画『運命の瞬間(とき)/そしてエイズは蔓延した』を思い出した。そして、この作品の9章では、その研究段階にある患者の様子を描いている。ここを読んだだけでも、目を覆いたくなる気持ちだった。

ベルナールが感染し、自宅でマルクの看病を受ける。偉大な作家は、このエイズひとつのために羨望や憧憬の眼差しから捨てられ、再び社会からの恥辱を浴びせられる。だが、ベルナールは、それでかつての自分を取り戻したのだった。そして、当初はベルナールを理解できずにいたマルクも、看病の果てにベルナールの生き方を理解し認めていく。やがて、それはベルナールの意思を汲み、除け者としてベルナールを葬ることへとつながっていく。マルクをそこへと向わせたものは、ベルナールに対する愛に他ならない。

俺を、このまま俺として死なせてくれ。自分の存在意味と存在価値。それが、たとえ社会から除け者にされる在り方だとしても、それが俺。これ以上の自己認識、これ以上の自分の存在の主張はないのではないだろうか。そしえ、その思いに応えるべく、マルクは毒薬の入った注射器を持って、自らもベルナールの隣に横たわるのだった。


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