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運命の瞬間(とき)

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原題: And the band played on
邦題: 運命の瞬間~そしてエイズは蔓延した
原作: Randy Shilts
監督: Roger Spottiswoode
脚本: Arnold Schulman
出演: Matthew Modine, Richard Gere, Steve Martin, Anjelica Huston, Alan Alda, Phil Collins, Lily Tomlin, Ian McKellen, Nathalie Baye, Glenne Headly 他

内容紹介: 1980年アメリカ。原因不明で治療方法もまったく分からない病気によって人が死んだ。人類を脅かすこの新たな脅威に対し、若く有能な医師ドンと数人の医師が挑んでゆく。ドンはこの病気が血液を媒体として広がることを発見し、輸血用血液のチェックを求める。一方同僚ビルは、この病気がホモセクシュアルの人々の間で広がっていることを発見する。ドンたちは全力でこの病気と取り組むが、莫大な研究資金の問題が彼らを苦しめた。一方フランスでもこの病気の研究が進みウィルスが発見されたが、研究を巡って米・仏の医師の間で争いが起きてしまう。だがその間にも、多くの人々が治療薬もないまま、恐るべき病の犠牲になってゆく…。(パイオニア)

また、以下は実際に当時ギャロ博士の研究室に留学していた岡本尚氏による解説です。

時は、1970年代の後半。最後の致死的感染症と考えられた「エボラ出血熱」もWHOの活動によりアフリカのある村の被害者を最後に終焉した。アメリカでは懸案のベトナム戦争も終結し、人々は人生を謳歌するのに余念がなかった。そして、ゲイの人々の権利も社会の中に漫然とではあるが公認されつつあった。しかし、ほとんど時を同じくしてある病気が着実に人々の間に広まりつつあった。通常は全身の免疫力が低下する疾患を持つ人々の間に起こる特殊な肺炎(ニューモシスティス・カリーニ肺炎)や、従来は稀にしか見られなかった特殊な皮フの悪性腫瘍(カポジ肉腫)が、健康な若い男性の間に突然発症し始めたのであった。しかも、場所はアフリカ奥地などではなく、ロサンゼルス、ニューヨーク、パリなどの大都会。医師達は、この予想もしなかった、理解を越えた病気の出現に当初はただ当惑するだけであった。この原因不明の病気で死亡する者の数が増えていく事に最初に気付いたのは、アメリカ全土の疾病登録を管理する立場にあるCDCで働くひとりの調査アシスタントの女性であった。彼女の上司達もやがて事の重大さに気付かされることになる。ただちに調査委員会が設置されて、この病気の犠牲者に共通する背景要因(危険因子と呼ぶ)が調査される。そして、当初の犠牲者がほとんどゲイであることが判明し、また大都市のバスハウスを中心に拡まっていることがわかった。これらの患者が原因不明の免疫不全状態におちいっていることが、免疫反応をになうリンパ球の検査から明らかになった。すべての患者の体内において、免疫応答制御の中心的役割を担うCD4リンパ球(ヘルパーT細胞)の数が極端に低下していたのである。フランスではパスツール研究所のリュック・モンタニエ博士の研究室が、アメリカでは国立がん研究所のギャロ博士のグループが、患者のリンパ組織や血液中のリンパ球からの病原体の分離を試み始めた。彼らは、今までの知識から、CD4細胞を選んで感染しこれを殺す病原体をレトロウィルスと推定し、追跡を開始したのである。

その間にも、エイズの拡がりは加速化されていった。すでにこの病気はゲイの人々だけに限られたものではなく、輸血による感染や麻薬の回し打ちによる感染の犠牲者も明らかになっていった。特に輸血による感染は一般の人々にパニックを引き起こした。また、常に血清成分の注射をし続けなければ安全に生活できない血友病患者にとっては特に切実な問題となった。医療関係者の間でもエイズ患者の治療の際に起こる「針刺し事故」が問題になっていった(これらの事情は日本においても同様に深刻となった)。病原体を見つけ出し、血液検査法を開発することにより安全な血液を確保することが急を要する課題となったのである。


感想: 作品はドキュメンタリー風に仕上がっている。原作にしてもこの映画にしても、AIDSの発端を知る参考となるだろうと思う。だた、岡本氏によると、映画で描かれているような手柄の争奪のような話は全くなく、悪玉的に描かれていたギャロ博士だが、ご本人は全くそのようなことはないということだ。この点と多少の未熟な部分を除けば、『AIDS』という病気が人類に投げかけた重大な問題が理解できるだろうと思う。

ゲイの病気あるいはゲイの癌から始まった病は、次第にホモセクシュアルだけの病気でないことが明らかとなっていく。日本でも大問題になった血友病患者の問題も献血の問題も出てくる。人々の生命の危機を間に置いても、利益で動く者がいる。これもまた悲しいかな、人間ゆえの現実だろう。

救いはどこにあるのだろうか。それは、命を命として、何ものよりも尊く大切なものとして扱う私たち自身の心にあるのではないだろうか。CDC(疾病対策センター)調査官ドン・フランシスの活躍は、そのことを私に教えてくれる。彼は1992年に退職し、AIDS治療の研究に人生を捧げている。

未知の病気が人々の生命を脅かすとき、その解決は個人の力では限界がある。いや、無理だと言っていいだろう。この作品の中でも、ドンの研究の壁となったのは、予算だった。しかし、当時の大統領レーガンがAIDSに関わる初の演説を行ったときには、既に犠牲者の数は二万人を遥かに越えていた。AIDSの為の予算も組まれることはなかったのである。ゲイの病気という偏見が対応を遅らせた結果だった。判断を誤れば、そうでなかったものまでが人災となってしまうのだ。

未知ゆえに、その解決には自ずと時間が費用がかかる。それは素人でもわかることだ。だからこそ、対応は後手に回ってはいけない。ひとの命を天秤にかける権利など、誰にも、国にもないのだ。

そして、その解決に心血を注ぐ研究者たちの努力は、想像を絶するものに違いない。彼らの敵はウィルスであって、そこに偏見や差別など存在しない。映画の中で、AIDS感染を告げられた者たちは、ホモセクシュアルであるなしに関わらず恐れ慄く。それは何故か?怖いからだ。性的云々の問題ではなく、人間として『怖い』からなのだ。『怖い』とはどういうこと?私は、この言葉の意味を、この映画を通して改めて考えなくてはいけないと思った。


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+ comments + 1 comments

Anonymous
2:17 PM

岡本氏によると、映画で描かれているような手柄の争奪のような話は全くなくということですが、以下の記事によれば、実際にはあったということになりますね。

https://www.iyaku-j.com/MDJOURNA/VIRUS/doc/2008n2/008.htm

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