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ロマンス

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著者: つか こうへい

内容紹介: 「おまえを見守りながら、ただ静かに泳いでいた」。美しい元オリンピック候補シゲルに惚れてそばで尽くすようになった牛松。

そして今、時間のとまった酒場で、自分と同じ、秘めた「愛」を生きようとする息子に父親として語りはじめる。よろこびと苦渋にみちた、過ぎ去った青春の日々を。「愛」を問いつづける作家の宿命のラブ・ストーリー。(光文社文庫)

感想: 物語は、牛松が17歳になる達彦を連れ、十年ぶりにゲイバーへ行くところから始まる。それは、息子の達彦にもその気があると知った牛松の親心からだった。牛松(倉持家に婿養子)は、自分がオカマであることを妻にも知られ、結婚はしているが妻を愛せないのだと達彦に告げる。そして、ゲイバーの帰り、達彦をそのまま家に帰し、自分はひとり家を出てホテルに身を置くのだった。そこから牛松は、達彦に手紙を送り、かつて自分が達彦と同じ17歳のときに愛した青木シゲルとの日々を語り始める。自分の青春の恋物語をすべて息子に話し、強く生きていってほしいと願いながら。

これもひとつの愛し方なのだろう。同棲し、自分の力で絶対青木をモスクワ五輪に連れて行くんだと、自分の生活のすべてを青木に捧げ、これでもかと尽くしに尽くす。でも、当の青木は、その気もないのに妊娠させてしまうなど女癖も悪ければ、ゲイバーにも出入し、好き勝手にお金も使う身勝手な男。ゲイバーの若月さんに「別れなさいと」言われても、彼は、青木には俺が必要なんだと、自分の身を売ってまで、青木が作った借金を返す。嫉妬と独占欲と献身的な愛。

牛松の愛はどう考えても重過ぎるだろうと、私は思った。どろどろした男同士の愛。自分から勝手に思いを寄せ、国体決勝では青木に勝ちを譲り、そして同棲を始め青木のために毎日くたくたになるまで尽くす。青木が女と関係を持てば、激しく嫉妬し、相手が男であってもそれは同じ。青木が家を出ると別れるときには修羅場を演じ、そして、青木からの脅迫。

しかし、盲目的に愛するとは、こういうことなのかも知れない。そして、青木は自分をさらけ出すことで、牛松の思いを受け止めていたのかも知れない。たとえ、自分の行動が牛松を苦しめることになろうとも。それでも、自分にとことんやさしく尽くしてくれる牛松は、青木にとって唯一のやさしさだったのだろう。いけないとわかりつつも甘えてしまう…それがやさしさの魅力なのだろうか。

物語の終盤には、息をのんだ。若月さんがエイズで死に、和歌山のかの地で青木と漸く再会を果たすのだが…

この作品は1999年4月~6月に放映され、『同窓会』に魅せられた視聴者は、再びテレビに釘付けになった。出演は宮沢りえ・池内博之・吉田智則、他に雛形あきこ・加藤晴彦・風間杜夫 西村和彦など、ゲイには堪らない役者が顔をそろえている。


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