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独立少年合唱団

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原作・脚本: 青木研次
監督: 緒方明
出演: 伊藤淳史, 藤間宇宙, 緒方明, 香川照之, 滝沢涼子 他

内容紹介: 全共闘運動全盛の70年代初頭を舞台に、合唱を通して心の交流をはかる少年たちの姿を描いたドラマ。『鉄塔武蔵野線』の伊藤淳史が吃音症を克服していく少年を熱演。(バンダイビジュアル)

感想: この映画が2000年ということは、その年かその翌年に原作を読んだことになる。やおい系の本が並ぶ中に『独立少年合唱団』はあった。当時は少年もののどこか切ない作品という印象だった。

作品内容はゲイをテーマにしたものではないが、本屋の分類にも見るように一種のボーイズ・ラブと受け止める人も少なくないのかも知れない。


小学生の頃、家の庭でさなぎから出たばかりのセミを見つけたことがある。脱殻は木に張りついたまま、当のセミは地面に落ちていた。やわらかな白い体に縁取るような淡い緑。目の前に実体としてあるのに、どこか半透明のものを見るようでなぜか今にも消えていきそうに思えた。

この映画を見て、このセミの記憶が甦った。

純真な少年の心。色を持たない、しかも壊れやすいガラスのシャボン玉のような。何かに懸命にしがみつこうとする生の模索。友情と言うにはあまりに深く、かと言って恋愛というには俗がなく、子供でも大人でもない微妙な位置は、そのまま少年の心の在り様を表しているように思われた。

吃音症の柳田道夫は父を亡くし、年の離れた兄はいるものの、家を出て全寮制の独立少年学院で暮らすことになる。教室に案内される途中、道夫はどこからか聞こえてくる美しい歌声に引き寄せられる。ウィーン少年合唱団の歌声。音楽室にいたのは伊藤康夫だった。

転校初日から道夫は吃音を馬鹿にされるが、それをかばい続けたのが康夫だった。康夫は道夫を合唱部の顧問の清野に道夫を紹介する。そして、道夫は合唱部員になる。

合唱の練習を通じて友情が深まっていく康夫と道夫。しだいに彼の吃音も治っていった。

そんなある日。顧問の清野をひとりの女性が訪ねてくる。彼女は全共闘の運動員だった。そして、かつての同士清野に、追われる身の彼女は助けを求めたが、俺はもうやめたんだと彼は拒み続けた。だが、事件は起きた。刑事に追い詰められた彼女は、康夫や道夫の見ている前で爆死する。

衝撃を受けるふたり。康夫の心はしだいに変化していく。

そうした思いを合唱コンクールの練習に必死に注ぎ込む康夫。その康夫に導かれるように道夫の心も変化していった。

ところが、康夫に声変わりが訪れる。もう歌えない。彼は自分の存在意義すら見失いつつあった。そんな康夫を懸命に支えようとする道夫。

「僕が康夫の声になる」


全共闘員の女性の爆死は、少年の心に何を齎したのだろうか。そこから少年の心はどこか少年ではなくなっていくのを感じる。真っ白な何もない空間に突如として光が差し、それがある形となっていくような。それとも既に大人になるために持っていたものが初めて光に照らされ形を露にしていったような。

康夫は合唱コンクールで優勝するという決意を抱く。何かを果たしたい。強い意志が少年の心に目覚めた瞬間だった。

何かを目指す。何かを果たす。必死にしがみつくものができた少年の心は、生の青い息吹を感じさせる。

だが、この作品は同時にそれが敗れる瞬間をも見せてくれる。少年が味わう初めての絶望。そこから必死に救い出そうとする道夫。苦しみに打ちひしがれる康夫。

強く見えた少年は、やはり半透明のセミのように儚かったのだった。


合唱コンクール当日。少年たちの歌声がホールに響き渡る。その歌声は成熟した男声足り得ず、だが一瞬の煌きを放っていた。彼らの歌声そのものが少年であり、束の間の青き透明な時代なのだろう。




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