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ベニスに死す

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原題: Morte a Venezia
A.K.A.: Death in Venice
原作: Thomas Mann
監督: Luchino Visconti
脚本: Nicola Badalucco, Thomas Mann, Luchino Visconti
出演: Dirk Bogarde, Marisa Berenson, Carole André, Bjørn Andresen 他

内容紹介: 愛の何たるかを知る幸せと不幸。愛は人間の全身を心こめ幸せにみちびき、そしてまた愛が人間を底知れぬ深い不幸へと落し入れる。何故か。ヴィスコンティ描くこの『ベニスに死す』は文豪トーマス・マンの名著なるもヴィスコンティはこれを、まぎれなきヴィスコンティ映画に塗りあげた。愛に区別があるのであろうか。その美の美しさに酔うためには相手が女性であれ男性であれ許されるべきであるはずだ。有名なる作曲家が、はからずも見た美少年のタージオに魂うばわれたのは、そのあまりの美しさであった。しかも当の少年すら自分を見つめ自分を追う男性それも老いを感じる彼を冷たくあしらった。少年にはこの愛、この恋は、わかるわけがなく、老人はついに半ば発狂していき絶えた。

この名作を愛の涙あふらせて見ていただきたい。彼、全作品中でのベスト・ワンと申せるこのヴィスコンティ映画美術!(淀川長治)


感想: 芸術家とは、常に『極める』ことを望んでいるのではないだろうか?自分の求める『美』に苦悩する作曲家アッシェンバッハ教授もそのひとりなのだろう。彼は、純粋な美の境地を求め、汚れることを恐れ忌み嫌った。

自分の才能に行き詰まり苦悩する彼は、ベニスを訪れる。そこで彼は、Bjørn Andresen演じるタージオという名の美少年と出会う。タージオは彼が求める究極の『美』そのものだった。彼は瞬時にして、タージオの虜になる。朝から晩まで、至るところで彼はタージオの姿を追う。

だが、タージオはそんな彼に気付きながらも、笑みを浮かべるだけで、決して彼のものにはならなかった。

タージオへの思いは『愛』であると気付くアッシェンバッハは、タージオを心の底から求めつつも手にすることが出来ないもどかしさに苦しむ。そしてまた、タージオの美そのものに畏れ慄き立ちすくむのだった。そして、ついには、その苦悩の内に、彼は命を落とす。タージオを見つめながら。

作曲家としての苦悩。自分が最も求めるもの、それは汚れなき『美』であった。そして、その具現化したものがタージオであったのだろう。だが、彼は求めて止まない筈のタージオという『美』を前に、何も出来ない。ただ遠く隠れて見つめるだけなのだ。

人は、心底求めてやまないものや究極のものを目の前にしたとき、手を出すことよりも畏れを先に抱くものなのかも知れない。それは、何故なのだろうか?それを手にすると、芸術家としての生命が終わるからだろうか。それとも胸に抱きつつも、実はそれがどういうものであるのかがわからない故に、目の前に出現したとき戸惑い引くのであろうか。

彼は、求めるものがそこにあるのにも関わらず、それを手にすれば、自分の苦悩が終わるのにも関わらず、見つめることが精一杯で、その為に更に心を蝕んで行くのであった。そして、患っている病まで。

だが、私はひとつ気付いた。最後には命を落とすことになるアッシェンバッハだが、タージオに具現化された『美』を手には出来なかったものの、その『美』だけは汚れないままに守り通すことは出来たのではないだろうか。それが私には、彼のひとつの勝利に思えてならない。そして同時に、ここにひとつの救いを見るのだ。

ベニスの町に疫病が蔓延し、彼は意を決して、タージオの母親に「ここからお逃げなさい」と告げる。それは、誰よりもタージオを守るためだった。そして、命を落とす場面。彼は、砂浜で、いつものようにタ-ジオを見つめている。すると、タージオが友人と喧嘩を始める。助けようかどうしようか、おろおろする彼。だが、喧嘩は大事には至らず、タージオは砂で汚れた体を払いながら、海へと入っていく。そこで、彼は見るのだった。夕日の中に輝くタージオの美しい姿を。その姿を見つめながら、彼は微笑みそして死んでいくのだった。

この映画は、映画評論家の大御所、故淀川氏の言われるように、確かに悲劇なのかも知れない。だが、単に男に心奪われた中年の悲劇では、俗なホモ映画になってしまう気もする。

例えば、こう考える。ひとりの芸術家が何かを求める。その何かとは至高のもの。だが、そこに辿り着けないとき、ひとりの芸術家は身をはって、それを守り抜くのである。理想あるいは信念。人には、辿り着けなくても守り抜きたい何かが、あるものかも知れない。


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