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監督: Jonathan Demme
脚本: Ron Nyswaner
出演: Tom Hanks, Denzel Washington , Roberta Maxwell, Buzz Kilman, Karen Finley, Daniel Chapman, Mark Sorensen Jr., Jeffrey Williamson, Charles Glenn, Ron Vawter, Anna Deavere Smith, Stephanie Roth Haberle, Lisa Talerico, Joanne Woodward, Jason Robards 他
内容紹介: 一流の法律会社で働く敏腕弁護士ベケットは、体調不良で検査を受けた結果エイズ感染を宣告される。会社側は仕事上のミスをでっちあげ、彼を解雇。不当な差別と闘うためにベケットは意を決して訴訟に踏み切る。彼の毅然とした姿勢に心打たれた黒人弁護士ミラーの協力を得て、ついに自由と兄弟愛の街フィラデルフィアで注目の裁判が幕を開けた…。
『羊たちの沈黙』のジョナサン・デミ監督が『エイズ』というシリアスなテーマに挑んだ感動のドラマ。主演のトム・ハンクスはこの作品でアカデミー賞主演男優賞など多数の賞に輝き、ハリウッドきっての演技派として揺るぎない地位を獲得した。(ソニー・ピクチャーズ・エンターテイメント)
- フィラデルフィア (映画) - Wikipedia
- Philadelphia (1993) - IMDb
感想: 1993年アメリカ作品のこの映画は、今見てもきつい映画だと感じてしまう。それは、この作品が、ひとびとの心の中に隠されているエイズやホモセクシャルへの偏見や差別を、ストレートに表現しているからだろう。
本来なら、ホモセクシャルである前にひとりの人間である筈なのに、またそう扱われて然るべきなのに、ベケットのような秀でた者でさえ、偏見や差別の刃から逃れることは出来なかった。
映画の中で、ベケット側の証人として法廷に立った者を、ミラー弁護士が「おまえはホモか?」と問い詰めるシーンがあった。そのとき、被告側弁護士は「性的な問題は関係ない」と異議を申し立てた。
果たして、そう言えるのだろうか。この映画での被告側の面々もそうだが、私たちホモセクシャルに向けられる関心は、ひとびとが私たちの性癖に気付いた瞬間から、個々の人間性よりも『性への興味』に取って代わられてしまうのだ。ミラー弁護士が訴える通りなのだ。誰しもが『性への興味』を走らせてしまう。
何故なのだろう?それは、『性』というものが、それだけ人間の『本性』だからなのではないだろうか。本質的なことを置き去りにして、ひとびとはあれこれ想像をし、あるいは既に植えつけられている考えに縛られ、偏見や差別を生み、それを横行させていく。公にも秘密裏にも。
私は、映画『モーリス』の一場面を思い出した。
イギリスという国を指して)この国は、人間の本性を否定し続けてきた国なのだ。
これは、モーリスが自分の性癖に悩み、カウンセラーを訪れた際に、そのカウンセラーが言った言葉だ。当然のことだが、私たちホモセクシャルにも、『性』という本性がある。何故なら、ひとりの人間なのだから。
そして、この映画で大きく取り上げられているエイズ問題。ここにもまた偏見や差別があるのだが、これは無知ゆえの恐怖がもたらすものであることも、この映画でははっきりと描かれていたように思う。恐怖がHIV感染者を遠ざけてしまうのだ。そして、肉体的な死よりも先に、彼等に『社会的な死』を与えてしまうのだ。何と残酷なことだろうか。
僕を見捨てないで。僕をひとりにしないで。
歌に込められた思いは、あまりにも切実で哀しい。
マリア・カラスのアリアを聞きながら、私はこう感じた。
『苦しみの中にこそ、ひとびとは愛を求め 苦しみの中にこそ、ひとびとは愛を見出す』 と。
原作者のクリストファー・デイヴィスは、デビュー作『ジョセフとその恋人』で、愛するものとの死別の悲しみを、続く『ぼくと彼が幸せだった頃』では、エイズ問題を取り上げ、そして、この『フィラデルフィア』で、エイズ問題を軸に偏見と差別に立ち向かう者の姿を描いている。ひとつひとつの作品に、この原作者の心の在り方がはっきりと感じられるのである。
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