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夏の約束

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著者: 藤野 千夜

内容紹介: 芥川賞受賞作。8月になったらキャンプに行こうって、みんなで約束したのだった。

ゲイのカップルを中心とした若者たちの日常を、抑制の効いた温かい視点で淡々と描く。孤独と欠落感に縁取られた登場人物たちの内面が読む者の心にしみる注目作。(講談社)

感想: 藤野千夜さんは、MTF(Male to Female)の女性です。新聞で、藤野さんが芥川賞を取った記事を読んだとき、正直「こういう人も賞を取るんだ」と無意識的な差別発言を心の中でしながらも、勇気付けられたことを今でも覚えています。彼女の賞がきっかけというわけではないけれど、それ以降、性同一性障害はマスコミでもよく取りざたされるようになったと記憶しています。

この『夏の約束』には、マルオとヒカルというゲイのカップルもいれば、藤野さんのようなトランスジェンダーのたま代という女性もいます。他にも友人として、マルオと同じアパートに住む岡野さんや一応作家の菊ちゃん、そしてのぞみ…彼らはみな近いところに住み、仲良くしています。そして、その彼らが夏になったらキャンプに行こうと約束していたのをきっかけに、ストーリーは進んでいきます。

この作品は、マルオを軸に描いた作品にも見えるけど、読み進めていくうちに、真の主人公はたま代で、それはかつ藤野さんの分身ではないかと思えてきます。たま代も含めて彼らみんなが存在する世界は、藤野さん自身の世界ではないかと。淡々として、のんびりほんわかした感じ。それぞれの人物に背景があり、それをお互い何となくも理解しながら仲良くしている…そんな世界。これって、普通でありながら、実はなかなか簡単には手に入らないのでは?

たま代にはアポロンという飼い犬がいます。たま代とアポロンのやりとりやアポロンの行動などすべてに、私は藤野さんの過去を重ねて見てしまいます。実際ご本人を知っているわけではないけれど、アポロンの淋しさや怯えは、彼女の悩んだ日々そのものではないだろうかと。そして、たま代は現在の彼女自身の一姿であるような気もするのです。

そして、彼女が求めた世界、それがこの作品に表れているように思います。『夏の約束』…それは、もしかしたら彼女自身が女性となった未来の自分とした約束なのでは?

作品の中でマルオがたま代にキャンプしたい理由を尋ねます。何かキャンプに思い出でも?すると、たま代は即答します。ないから行くのだと。

彼女は、この作品に、未来の自分の思い出作りを託したように思えるのです。本当の自分に向けた約束。私はそこに、自分を大切に生きようとする彼女の温かみを感じるのです。


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