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仮面の告白

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著者: 三島由紀夫
内容紹介: 「私は無益で精巧な一個の逆説だ。この小説はその生理学的証明である」

女性に対して不能であることを発見した青年が、幼年時代からの自分の姿を丹念に追求するという設定のもとに、近代の宿命の象徴としての"否定に呪われたナルシシズム"を開示してみせた本書は、三島由紀夫の文学的出発をなすばかりでなく、その後の生涯と文学の全てを予見し包括した戦後文学の代表的名作である。(新潮文庫)

感想: 男として生まれた私は、誰かに女を愛せと言われたことは一度もなかった。また、男を愛せとも。しかし、幼い頃から、青年の逞しい裸を目にするたび、逆に打ち込まれた杭が私の喉の奥から出て来そうな感覚を抑えることが出来なかった。得体の知れない塊。こそばゆいような疼き。

女の子にも性的な興味はあった。だが、それと同時に青年に向けられる不可思議な感覚。それが性的なものだとは、初めはわからなかった。幼かった私は、出会う青年に、自分を守ってくれるやさしさをそして強さを求めていたように思う。その強さが具現化したもの、それが彼らの肉体ではなかったろうか。

思春期を迎えた私は、同じクラスの男の子を好きになっていた。男の子が当たり前に女の子を好きになるように。それが異常だとか、自分のどこかが壊れているなどとは露ほども思わなかった。何故なのだろう。異性をあるいは同性を好きになるという振り分けは自分の中には一切なく、ただそのひとのことを好きになったというだけに過ぎない。それが罪だとかいけないことだとか、私の頭の中にはなかった。

以来、私はごく自然に男性に対して恋をするようになった。恋愛対象が男性だけに固定された。私にとっての同性愛は、一過性のものではなかった。

どこがきっかけでと、たまに思うことがある。今では先天性だと言われているけど、もしも先天的に同性愛者としてのプログラムが自分の脳に組み込まれて生まれてきたのだとしても、それが作動しないような生き方をしたら違っていたのだろうか。だとしたら、何故私のそれは動き出してしまったのか。

世の中の目を理解しだすと、私は男を愛する他のもうひとりの自分が、実はどこかに隠れているのではないかと思った。女性との恋愛。

私はその女性のことが好きだった。一緒にいて楽しかったし、何の気兼ねもなくいられた。他愛ない会話をしているとある瞬間、私の胸に私は彼女とセックスするんじゃないかという思いが過ぎった。それはまるでひとつの啓示のようだった。同性愛者として生きることを最終決定するための過程。

私は彼女と接吻を交わした。肉体も重ねた。だが、私の中に明らかに何かが欠如していた。それは感情。男が女を抱くときの感情。恋愛、情愛、性愛といったふたりの中で絡み合うものが欠如していた。始める前の思いも忽ち消え去り、私の中には不完全な燃えかすだけが残った。

彼女のことを、人としては愛せるのだろう。だが、狂おしいまでの情念は生まれない。男を好きになるときのときめきも、交際しているときの幸福な気分も、抱き合っているときの心の底から叫びたくなるような狂喜の快楽も。

それが私だった。生き方を決められた、そしてまた自分で選んだ私。不幸だとは思ってはいない。誰かを愛せるのだから。

三島由紀夫の作品を読むのは、この『仮面の告白』で2作目になる。『仮面の告白』は、高校時代に女子が読んでいて話題に上っていたのを覚えている。どういう内容かと友人に尋ねたとき、男がどうたらこうたら、彼の答えをはっきりとは覚えてはいない。私はそのときでさえ、自分が既に男の子を好きになった経験を持ちながらも、自分とは関係ないもののように思っていた。自分が偏見や差別の枠の中に生きる者だとは思いもしなかった。

この作品を、私は自分を辿る思いで読むことができた。ひとつひとつの出来事が、自分の過去と呼応していった。自分を再確認した未来はどんなだろう。ふと、私はそんあことを思ってみた。


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