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消えてゆく部屋

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原題: Vanishing Rooms
著者: メルヴィン ディクソン
翻訳: 田内 初義

内容紹介: 恋人のメトロ(白人男性)が反ゲイ暴力によって殺された。その時から僕の果てしない悪夢の日々が始まった。

アメリカの人種間に横たわる深い愛の亀裂と暴力への欲望を鮮烈な文体で描き出し、“J・ボールドウィンを凌ぐ才能”と激賞されながら、エイズで逝った黒人作家の代表作。(砦出版)

感想: メルヴィン ディクソン自身、既に1992年エイズで亡くなっている。作家として今後を期待されていただけに、その死を悼む声が多かったということだ。それは、この作品を読むだけでも十分頷ける。心理描写がうまいのだ。読みながら、何度も感心した。

物語は、メトロという白人男性(新聞記者)が殺されるところから始まる。メトロとジェシー(ダンサー)は恋人同士で、ジェシーは黒人のゲイ。メトロは白人のゲイだ。メトロという呼び名はジェシーがつけたものだった。そのメトロが、街のごろつきのひとりの少年に興味を持ち、それが仇となって仲間に殺されてしまう。ホモ野郎と罵られながら、口も尻の穴も犯されながら殺されていくのだ。

恋人の死を知ったジェシーはダンス仲間の黒人女性ルーム(あだ名)のもとに身を寄せる。ルームはジェシーに惹かれていくのだが、その思いは一緒に暮らしながらも遂げられることはなかった。そして、メトロが興味を抱いていたロニーという白人少年がメトロの遺体のあった場所に裸で寝ているところを警官に捕り、それがきっかけとなってメトロを殺した連中が捕まる。

物語は、ジェシー、ルーム、ロニーの三人がそれぞれの立場から語ることによって進んでいく。僕が特に引かれたのはロニーだ。まだ10代半ばの少年が、自分をホモではないと否定しつつも、徐々に変化を遂げていくさまがとてもおもしろい。というか、なるほどと頷き考えさせられるのだ。だからと言って、ロニーが自分はホモなんだと認めるわけでもないのだが、ゲイの世界に引き込まれていくであろうその匂いが何ともうまく表現されている。

そもそも自分は仲間に強要されてメトロにフェラさせたけど、メトロをナイフで刺してはいない。その罪の意識なのか、彼はメトロの遺体のあった場所に行く。そして、服を脱ぎ、まるで彼と一体になるかのようにその場に横になるのだ。このシーンひとつ取ってみても、僕などは唸ってしまう。そして、刑務所に入った後も、自分はメトロを受け入れたのだろうかと考える。いや、そんなことはないと否定しつつも、どこか完全に払拭できない思いが残る。

刑務所を移ると、偶然、面会場所でジェシーに会ってしまう。同じ刑務所に入っているルームの兄の面会に連れてこられたのだった。そして、事情を知ったルームの兄たちは、ロニーをシャワーの時間に輪姦してしまう。だが、それがきっかけでロニーは、刑務所を出たときに自分の体を武器に金を稼ぎ始めるのだった。

ジェシー、ルームが抱えるそれぞれの問題も、また興味深い。ルームは兄を恋い慕い、肉体関係まで持ってしまうが、兄が麻薬に手を出しているのを知りながらもそれを止めさせることができなかった。逮捕された兄。ルームは兄と距離を置くようになる。だが、それを再び近づけていったのが、ジェシーとの関係だった。

ジェシーはジェシーで、自分の名前は母親から取ったものだと思い込み、母親の名前を持つものはゲイになるという迷信にとらわれていた。更に、黒人であることから受ける差別。彼が生きていける場所はメトロであり、ダンスだった。だが、メトロは消えてしまった。その彼がいなくなってしまった心の中で、彼はメトロとの関係を振り返っていく。そして、現在進んでいるルームとの関係。そして、ダンスへの思い。

ゲイによる小説が溢れている環境は、海外の本を手にするたび本当に羨ましく感じる。昔はよく早川書房が海外のゲイ文学を翻訳出版していたのだが、最近はどうなのだろう。この『消えていく部屋』も実は購入したのは十年以上も前。そんな買ったはいいけど読まずにいた本が、まだ何冊か残っている。また新しいのを手にしたいとも思うが、なかなか翻訳本を見つけるのは困難な状況で、ちょっとがっくりくる昨今なのだ。


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